オールドレンズ 技術面からみた最適なカメラの考察

カメラ
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はじめに

この記事の主題は「おススメのカメラ紹介」ではなく、「技術面からみた最適なカメラの考察」になります。

手っ取り早く結論だけを知りたい方は、「おすすめのカメラ」の項を確認もらえると幸いです。

オールドレンズとは

定義

オールドレンズとは、一般的には「フィルムカメラ全盛期に設計/製造された」レンズの事を指します。つまり、呼び名の通り比較的古い設計のレンズであり、現在のレンズと比べて性能的に劣る部分がかなりあります。

しかしオールドレンズ特有の劣る部分が、作品の雰囲気や味となり、メリットになりえます。なので最近は、敢えてオールドレンズを好んで使う方もかなり増えてきました。

そんなオールドレンズに適したカメラの選び方を、技術面からつれずれと書いてみたいと思います。

特徴

マニュアルフォーカス

フィルムカメラの時代には、オートフォーカスの存在は希少なものでした。つまり、レンズの殆どはマニュアルフォーカスで使うことになります。

初めて使うとピント合わせに苦労するかもしれませんが、馴れると動きの速い被写体以外には困る事は無くなりますし、何よりピント合わせ自体が楽しくなります。

また今のレンズでもマニュアルフォーカスモードを備えているモデルもありますが、そのほ殆どはバイ・ワイヤ(電気信号で制御)である事から、自然な動作でない場合もかなりあります。

しかしオールドレンズはマニュアルフォーカスで使用する事を前提としていますので、ヘリコイドを内蔵しており、価格帯ににもよりますが自然な感覚でフォーカスリングを操作する事が出来ます。

描写が甘い

レンズ技術というものは日進月歩しています。時代によるトレンドもありますが、現在のレンズというものは、非常にクリアな映りである事が多いです。

それは当然良い事なのですが、人によっては「色気が無い」と表現する人もいます。個人的には「特徴が無い事が特徴」だと思っていますが。

過去のレンズは良くも悪くも、現代のレンズと比べて描写が甘い事が多いです。それはオールドレンズの欠点であると同時に、レトロ感を感じさせてくれるメリットでもあります。

フレアやゴーストが出やすい

過去のレンズと比較して、現代のレンズは「コーティング技術」が非常に進化しています。コーティング技術は、過去から現在にかけて最も進化した部分であるともいえます。

現在のレンズは非常に高性能で、逆光で使用してもフレアやゴーストが発生する事が少なくなっています。ただ時によっては、作品の雰囲気や味の一つとして、わざとフレアやゴーストを入れたい場合が出てきます。

フレアやゴーストが出やすいというのは欠点でありますが、積極的にそういった演出が出来るというメリットでもあります。

テレセン性能が低い

描写には直接関係はないのですが、デジタルカメラでの使用を考える際に、非常に大きな問題となります。これは次の項で詳しく説明します。

デジタルカメラで使用する際の問題点

テレセン(テレセントリック)性能の低さ

そんな魅力あるオールドレンズですが、実は設計的にデジタルカメラでの使用には適しません。オールドレンズの時代にはデジカメ(イメージセンサー)といったものは存在しませんから、当然、フィルムでの使用しか考えられていないのです。

一番大きな問題は、オールドレンズはテレセン(テレセントリック)性能が低い事です。

テレセン性能とは、「レンズを通った光が光軸と平行に出力される度合い」の事を指します。簡単に言えば、「フィルムやイメージセンサーに対して、光を如何に垂直に照射できるか」です。

フィルム(フィルムカメラ)は光が垂直に当たらずとも問題はありませんが、イメージセンサー(デジカメ)は光を垂直に当てる必要があります。参考として次項でその原理を記載してみましたので、気になる方はみて頂けると幸いです。

参考:イメージセンサーの仕組みと、フィルムとの比較

まずは簡単にフィルムで受光する場合の図です。なお下の画像で受光部と書かれている部分がフィルムの事を指しています。

見ての通り受光部までは何も無いので、どうやって光が来ようとも(例えば斜めから光が来ても)、何の問題もなく受光部まで光が届きます。

フィルム_受光_図解

次にデジタルカメラ(イメージセンサー)の場合ですが、受光部は最下層に存在しています。この事から特に問題になってくるのが「配線」の部分です。

井戸をイメージしてもらうと分かりやすいのですが、井戸の中は太陽が真上にある場合を除いて真っ暗になっています。これは太陽が真上以外の場合、光が斜めからくるために井戸の壁に当たり、井戸の底まで光が届かない事が要因です。

イメージセンサーにも同じ事が言え、光が斜めからくる(テレセン性能が低い)と配線(壁)に光が当たり、受光部分まで光が届かない事態が発生してしまいます。

だからデジタルカメラはフィルムと異なり、テレセン性能が非常に大切なのです。

イメージセンサ_受光_図解

カメラに求められる要素

レンズマウント(マウントアダプター)

レンズというものはメーカーによって互換性が無い事が一般的です。また年代によっても、互換性が有る/無しがあったりします。これらの規格を「マウント」といいます。

さてオールドレンズですが、過去のマウントの殆どは現代のマウントと違っており、互換性が有りません。よって、今のカメラでオールドレンズを使用するためには「マウントアダプター」と言われるマウント変換器具を使って、マウントを変更してあげる必要があります。

マウント面からみた、カメラメーカーの選び方

カメラメーカーは Canon / Nikon / Sony 等々色々ありますが、お勧めのメーカー(マウント)はずばり「SONY FEマウント」です。なぜなら、他のマウントと比較して、断然マウントアダプターが豊富だからです。

詳しい事は割愛しますが、オールドレンズを使用する際に大事な事は「①フルサイズの機種」「②フランジバックが短い」の2点です。

一般的にフランジバックは、一眼レフよりも一眼ミラーレスの方が短くする事が可能です。いまでこそ Canon / Nikon もフルサイズミラーレスをラインアップしていますが、以前はフルサイズミラーレスといえばSONYの選択肢しかありませんでした。そんな背景だから、「SONY FEマウント」のマントアダプターが豊富なんですね。

フルサイズである

イメージセンサーのサイズには「フルサイズ/APS-C/マイクロフォーサーズ」と色々ありますが、フルサイズ(35mm)である事がほぼ必須です。

何故なら、オールドレンズの殆どはフルサイズ向けに設計されており、受光部分のサイズが異なると、画角が変わってしまうためです。

なお画角については詳しく説明しないため、気になる方は「画角 + センサーサイズ」で調べていただけると面白いと思われます。

イメージセンサーに求められる性能

オールドレンズである以上、テレセン性能が低い事は止むを得ません。ですので、オールドレンズと親和性が高い(テレセン性能が低くてもそれなりの結果が出せる)イメージセンサーについて説明します。

なおイメージセンサーの説明では「参考:イメージセンサーの仕組みと、フィルムとの比較」で使った「井戸」のイメージが大事になってきます。思い出せない方は振り返って、もう一度みてもらえると幸いです。

裏面照射型である(=井戸の深さが浅い)

まずは「参考:イメージセンサーの仕組みと、フィルムとの比較」での説明で使用した以下の図をもう一度みてください。

現在主流な表面照射型のイメージセンサーは、受光部分の上に配線(壁)が存在しています(=井戸が深い)。これによって、斜めから侵入してくる光はもれなく配線(壁)に当たり、受光部分に届かない問題があります。

イメージセンサ_表面照射型_受光_図解

次に、最近採用が増えてきた裏面照射型のイメージセンサーの図です。表面照射型との大きな違いは、「配線の上に受光部分がある事」です。

これによってイメージセンサーまでの障害物が減り(=井戸が浅くなる)、光が多少斜めから差し込んでも、受光部分まで光が到達する事が可能です。

イメージセンサ_裏面照射型_受光_図解

画素ピッチが大きい(=井戸の直径が大きい=画素数が少ない)

井戸の深さと同様に、井戸の幅も受光に影響を与えます。下の図を見て欲しいのですが、画素ピッチが大きい(=井戸の幅が大きい)程に、入射角の許容範囲を大きくとる事が出来ます。

なお「画素ピッチが大きい」を言い換えると「1画素当たりのサイズが大きい」事であり、つまりは「画素数が小さい」事になります。

例を言います。下図の「画素ピッチ普通」ならば、ほぼ垂直に光が入らないと、受光部分まで光が届きません。しかし下図の「画素ピッチ広め」ならば、配線と配線の間が広いために多少斜めに光が入っても、受光部まで光が到達する事が出来ます。

イメージセンサ_ピッチ普通_受光_図解
イメージセンサ_ピッチ広め_受光_図解

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結論

技術面や特性から考えると、オールドレンズの母艦としてのおすすめは、 SONY α7 シリーズ、その中でも特に α7 III になると思います!以下でその詳細を説明します!

SONY α7 III

レンズマウントEFマウント
イメージセンサーサイズフルサイズ(35mm)
イメージセンサータイプ裏面照射型(Exmor R CMOSセンサー)
有効画素数約2420万画素
総画素数約2530万画素

まず大事な部分として、フルサイズセンサー搭載で、SONYのEFマウントである事があがられます。ほかのマウントと比較して、EFマウントはオールドレンズのアダプターの選択肢が豊富です。

次にイメージセンサーに裏面照射型を採用していることがメリットです。裏面照射型はオールドレンズ特有の特徴であるテレセン低能の低さに対して、非常に多きなアドバンテージがあります。

また画素数が程々に抑えられている事も魅力です。画素数が大きくなる(1画素あたりの面積が減る)程にテレセン性能の低さが顕著に表れる事から、オールドレンズ使いからすると、低画素である事はメリットになります。

SONY α7R IV

レンズマウントEFマウント
イメージセンサーサイズフルサイズ(35mm)
イメージセンサータイプ裏面照射型(Exmor R CMOSセンサー)
有効画素数約6100万画素
総画素数約6250万画素

レンズマウント、イメージセンサーサイズ、イメージセンサータイプについては、SONY α7 III と同じコメントになる事から割愛します。

ただし画素数からみると、オールドレンズ使いからすると α7R IV は SONY α7 III からすると若干不利になります。α7R IV は高画素モデルになる事から1画素あたりの面積が小さく、テレセン性の影響を大きく受ける事になります。

また α7 III に対して高価であるため、オールドレンズ を使うだけならコスパ的にも宜しくないといえます。

SONY α7S II

レンズマウントEFマウント
イメージセンサーサイズフルサイズ(35mm)
イメージセンサータイプ表面照射型(Exmor CMOSセンサー)
有効画素数約1220万画素
総画素数 約1240万画素

レンズマウント、イメージセンサーサイズについては、SONY α7 III と同じコメントになる事から割愛します。

なおイメージセンサー面では、α7S II のみイメージセンサーに表面照射型を採用しています(α7R IV、α7 IIIの は裏面照射型を採用)。表面照射型は裏面照射型と比較してテレセン性の影響を受けやすい事から、イメージセンサータイプからする不利になります。

一方で画素数面からすると、α7S II は α7R IV、α7 III と比較して有利になります。α7S II は「好感度&低画素」モデルであるため、テレセン性の影響を受けにくくなります。

まとめ

ネットを見渡すと「オールドレンズには~のようなカメラが良いよ」とは良く言われていますが、その原理を書いているサイトが無かったため、この記事を書いてみました。

がんばって書きましたので、もしこの記事を楽しんでいってもらえたなら幸いです!

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